「はい、次サラちゃん」
長いブロンドの髪の女教師――メイリル先生が、キリスの隣にいる少女に言った。
少女――サラ・アステローネは紅い髪を揺らして、元気よく立ち上がった。
「はいっ先生!」
ここは、ハーフエルフのリーフ族が住む森。
その深くの小さな村。スオール村という。
その村にある唯一の学校に、キリスは通っていた。
現在の時刻は11時。魔術の実習があっている。
生徒が一人一人、担当であるメイリル先生の前で雷の術(ライトニング)を使って岩を砕いていた。
50音の逆順なので、サラの次はキリスの弟、グレンの番だ。
「ライトニングっ!」
かわいらしい声でサラが叫ぶと、掲げられた指先に光がともり、雷となって岩に直撃した。
結果は半壊。それでもすごいと教師がサラを褒めている。
「すごいね、サラちゃん!」
そばにいたグレンが目を輝かせて言った。
「そうでもないよぉ〜、えへへ・・・・・・。ありがとう」
笑いながらこちらに戻ってくる。
「次、グレンくんね」
「はいっ! よぉし、がんばるぞーっ!
サラ! 見ててね! ・・・あ、あと兄ちゃんも」
呼ばれたグレンは意気込んで立ち上がる。
「俺はついでかよ」
「うんー、がんばって〜!」
キリスが突っ込むが、サラの応援にグレンは頬をそめて笑った。完璧にスルーだ。
「空を翔る金色の竜よ――・・・」
グレンが呪文を唱え始めた。
グレンの次は自分の番。
キリスは、ふぃ〜っとため息をついた。
「き、キリスくんも・・・・・・その。がんばって」
隣に座っていたサラが、話しかける。
サラの方を向くが、サラはあさっての方向を向いていた。心なしか、顔が赤い気もするが・・・
まぁよくあることだ。気にせずキリスは答える。
「? ・・・・・・おうー。まぁ、なるべく頑張る・・・かもしんない」
俺、魔術苦手だし。と、キリスが付け足した。
「大丈夫だよ。キリスくんなら・・・・・・」
サラが言う。励ましてくれているのだろうか。
「んー・・・サンキュ」
答えたところで、呼ばれる。
「次、キリスくんよー」
メイリル先生の声に、キリスは重い腰を上げた。
「はーい・・・」
のらりくらりとゾンビのごとく歩いていく。
「頑張って。先生おーえんしちゃうっ!」
キリスにハートマーク飛ばしている気がするが・・・。
その声にテキトーに答えると、キリスは呪文を唱え始めた。
指を、掲げる。
「・・・ライトニング」
だが、指先は光らない。
「・・・・・・あー・・・やっぱ駄目か?」
指を下ろして、光のともらない人差し指を凝視する・・・・・・・・・と。
ドッシャァァァァァァァァああぁァァアァアアァあァァァァアアアあぁああッッッ!!
いきなり空から雷が落ちてきて、岩を粉砕した。
「・・・お? なんか知らんが・・・成功?」
『失敗だ失敗っっっ!!!!』
雷の巻き添えを食らったクラスのメンバー達が、声をそろえてキリスに突っ込んだ。
●○●○●
「俺は魔術苦手なんだってーの〜・・・」
一人につき一発ずつ殴られ叩かれてボロボロになってしまったキリスは、ひりひりと傷む頬をおさえながら渡り廊下を歩いていた。
「あはは・・・大丈夫だよ、あんなに凄い雷なんだもん。キリスくん才能はあるって」
サラの言葉にグレンが、
「才能はあっても技術力がないんじゃね〜・・・」
横槍を入れる。
ポカっとグレンの頭を殴ると、キリスはため息をついた。
「うぅ・・・・・・俺なんて俺なんて俺なんてーーーっ!
女顔で成績悪くて悪運強いだけのゴミくずなんだぁーーへーんどーせ俺なんて・・・」
ブツブツ独り言を言い始めたキリスを見て、サラが苦笑した。
「あ、あのね、キリスくん。お弁当作ってきたんだけど・・・・・・一緒に食べない?
もちろん、グレンくんも」
昼休み開始のチャイムが鳴った。